ヘタレな野獣
ヘナヘナヘナ・・・

私はその場に倒れそうになったけど、武田君が掴んだ私の腕を上にあげてくれて、どうにか立っていられた。

「田崎補佐、正直こんなやり方、俺はおかしいと思うっす。何考えてるんすか!」

「・・・とにかくここを離れましょう。私は課長を呼んでくるから、武田君は車を回して来てくれる?」

有無を言わさず、私は最初に通された部屋に課長を迎えに行く。

何で、あんな事、口走ったのか・・・

今更ながら、震えが自身を襲う。


コンコンコンッ

『はい』

失礼しますと声を掛け、ドアを開けると、ヨレヨレ君は携帯で誰かと話していた。

「・・・失礼します」

私が来たからなのか、ヨレヨレ君は会話を終了させた。

「良かったんですか?携帯・・・」
「・・・あ、えぇ大した用事ではありません、それより、どうでしたか?プレゼン」
「えっ?
まぁ、それなりに・・・そろそろ、社に戻りましょうか」

適当に答え、課長を部屋の外に連れ出す。

そのままエレベーターに乗り、武田君が待つロータリーを目指す。


「どうかしましたか?」
えっ?

「何をそんなに慌ててるんですか?」
「別に慌ててなんて・・・私はただ課長の身体を・・・」

ヨレヨレ君の体調を心配してる体で、実はそんな事ダシにして、でも、本当はそうじゃない。




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