ヘタレな野獣
ん・・・何だか体が重い。


ん・・・苦しい・・・



息苦しくて目を覚ました。

ぼやけている視界が段々ハッキリしてきた。


あれ?
私いつの間にか帰ってきたんだろう。

今、何時?

携帯携帯・・・っと。


ビクッ


何?私の体の上に、何かある!


ジィッと目を凝らす。


う、で?

腕、じゃないの、
私は恐る恐るその腕を辿っていくと、・・・


っ!!!!!


いやああああああ!!!

思わずデカい声をあげそうになった。


そう、私の体に腕を纏わりつかせているのは・・・

眼鏡を外し、スヤスヤ寝息をたてているこの男、雨宮剛、であった・・・


私は思わず布団の中の自分の体を触った。


良かった、服は着てるみたいだ。
しかしっ!
落ち着け、私。
夕べからの行動を辿る。

会社を出て、ヨレヨレ君の行きつけの店に行った。


それから?
それから・・・

う~ん、考えても考えても、思い出せない。


「ん・・・田崎さん?・・・」

っ!

ドッキッ

ヨレヨレ君が目を覚ましちゃったし。


「田崎さん、眠れませんか?」


グィッ

ヨレヨレ君が私の体を抱き寄せた。

「ちょっ、雨宮君?」

「黙って、さぁ眠りましょう」


いやいや、無理、こんな状態で眠るなんて、絶対有り得ない!



そもそも何でヨレヨレ君が私のベッドに居る訳?

信じらんないっ!


「ねぇ、雨宮君?」

問い正そうと彼の方に顔を向けると、既に寝息をたててるし・・・

暗がりでも、もう目は慣れたから、ヨレヨレ君の表情が分かる。


ドキドキ・・・

初めて会った数週間前の面影は無い、“雨宮課長”が目の前に居る。


距離にして15~20センチといった所か。

こんな風に間近で拝見する機会など上司と部下の間柄であってはならない。

静まれ、私の心臓。

こんな風に抱き締められて、私はどうしていいのか分からなくなってきた。


やっぱり、こんなのおかしいじゃない、私は眠っているヨレヨレ君を、自分の体からひっぺがす為、体を右に左に必死で動かした。


「ん~、こらぁ、じっとしてぇえ・・・」
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