ヘタレな野獣
その声に、ヨレヨレ君が目を覚ましたと思った私は、顔を彼の方に向けた。

・・・・・

向けたその時、だった。

何かが私の唇に・・・触れた。

ヒッ

慌てて顔を天井に向ける。

キッ、キスしちゃったよ、ヨレヨレ君と!

どおすんのよ、どおすんの、私!

ピトッ・・・

彼の寝息が耳の横で聞こえた途端、ヨレヨレ君は私の頬に自分の頬を押し当ててきたしっ!

もお、やだああぁああ!



結局、その後一睡も出来ないまま、夜が明けてしまった。



ぼ~っと、仰向けのまま、ヨレヨレ君に抱き枕のように抱かれたまま天井を見ていたら、隣からクスクスと笑い声が聞こえてきた。


「おはようございます、田崎さん」
「おっ、おはよう・・・」
「眠れなかったんですか?」

はああぁあ?
「ねっ、眠れる訳、ないじゃない!この状況で!」


グゥグゥ眠れるあんたがおかしいっつうの!


「せっかく僕が添い寝してあげたのに・・・」

なっ、なに?
「添い寝って・・・だっ、誰もそんな事頼んでないし!」

信じらんない、何を言うかと思ったら!


「えっ?まさか田崎さん、覚えてないんですか?」

左腕をついて上半身を少し起こしながらヨレヨレ君は呆れた顔をしている。


えっ?まさかって、まさか?

「夕べ、帰ろうとした僕の上着を掴んで、一人で寝るのは嫌、一緒に寝てって言ったのは、田崎さんですよ?」



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