ヘタレな野獣
課の入り口で大声を張り上げる人事部長に、何故か目の前に座る男性が立ち上がる。

背が高い・・・少し驚きながらも此処に居る事をアピールした。
「はっはいっ、何でしょうか、部長・・・」
「おぉお、直接こちらにいらしたんですね」
「はっ、はいぃ、実は人事部の場所がそのぉ、あやふやでウロウロしていたらこちらが・・・」

そう言いながらポリポリ頭を掻きながら恐縮する怪しい男性に、部長は冬子には目もくれず、話し始めた。

何が何だか訳が分からない。

「丁度良かった。こちらがアメミヤ君だ!」

部長がドヤ顔でその男性を冬子達に紹介した。


・・・・・・・・・・・・



「「えぇえええぇえ⁈」」

部長のその一言に、冬子は田之上と顔を見合わせ、程なく今自分達が置かれている状況を理解し、発した言葉がそれであった。

「ん?どうかしたか?」

部長は頭の上に?を並べて、二人の顔を交互に見る。


「・・あのぉ・・・」

場の空気が読めないのか、怪しい男性が割って入る。
3人の視線が一斉にその男性に注がれる。

「あっ、あの・・・僕、アメミヤじゃ・・ありません・・・アマミヤです。雨宮剛〈タケル〉です・・・」

蚊の鳴くようなか細い声。


・・・・・・・・・・・・


「「「えええぇえええぇえ!!!」」」


しばらくの沈黙の後、またもや疑問符を大声で発する。


それって人違い?そう言う事?

「部長!どういう事ですか?」

思わず部長に詰め寄った。



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