ヘタレな野獣
ヨレヨレ君は私を玄関に押し込み、ドアを閉める。

そして私の横を通って奥の部屋へと消えていった。

もお、やだぁあ…

玄関に放置されたままの私は、このまま、帰ってしまおうかとそんな事が頭をよぎる。

でも、足は玄関の床に張り付いたかのように動かない。

どうしたものかと思案していたら、奥の部屋から私服に着替えたヨレヨレ君が出て来た。
「あれ?まだそんなとこに居たんですか?」

こっちこっちと手招きをする。

「・・・・・」
「もぉう、はぁやくぅ!」


いつまで経っても動かない私に苛ついたのか、ヨレヨレ君はズカズカっと玄関にやって来て、またしても私の腕をガシッと掴んで、そのまま部屋の奥へ・・・

パンプス脱ぐ時、転けそうになるし・・・

「ちょっ、雨宮君、危ないでしょ!?」
「いいからいいから!~♪~♪♪~」


何故か鼻歌を歌いながら私をソファーに座らせて、自分は台所に消えていった。

「ビールでいいんですよねぇ」
「・・・・・」

きっと、台所で、ビールのアテを用意してるんだと思うんだけど、こういう場合、私はどうしたらいいんだろうか・・・

「あのぉ・・・雨宮君?」
「~♪~なんですかぁ?」

・・・何故、そんなに機嫌がいいのであろうか。
「手伝う事、ある?」
「~♪~いいですよぉ、もう出来たから」

・・・やっぱりね・・・

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