ヘタレな野獣
彼は缶ビールを二本と何やらお皿を持って戻ってきた。

「じゃ、乾杯しますか!?」
「・・・」

一体何に乾杯するんだか。

私は彼に差し出されたビールを受け取り、タブを引っ張る。

「最終プレゼンに残った事と、田崎さんの貞操が守られた事に、かんぱぁ~い!」




「だかられすれぇ・・・ヒックッ僕はれすれぇ・・
事務所の中れ、ひっじょうにれすれぇ、肩身の狭い思いをれすれぇ・・ヒックッ・・・」

ビールがまだ半分程残っているグラスを顔の高さまで上げて、それを私の方へ突き出す。

「はいはい、分かったから、雨宮君、もう分かったから・・・」


多分注げという意思表示だと、私はそれを思いっきり無視して、彼の手からグラスを取り上げる。

「うんにゃ!
ずぇんずぇん分かってらい!ってか、田崎さん、なんれ、会社以外れ、僕の事、君なんれす?」

ローテーブルに右の二の腕を付いて、そこに顔を置き、変な格好のヨレヨレ君。
今この時の姿こそ、正にヨレヨレ君!
なんちゃって。

でも・・・
この人、お酒こんなに弱かったの?

この前飲んだ時、そんな風に感じなかったけど。

「こらっ!たぁさぁきぃい!僕の話、聞いてんのか、この野郎!」

あぁあ、マジでこの手の酔っ払い、ウザいんですけど・・・


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