ヘタレな野獣
「聞いてる聞いてる、ちゃんと聞いてますよ、雨宮課長」
「っ!!!!!その言い方、すんごくやらなぁ、田崎さんは僕をバカにひてるんれすれ!?」

何を言ってるのか分からない位、呂律が廻っていない。

「ちゃんと答えれくらさいれ?なんれ君、なんれすか?」
「公私の区別をつけたいだけ、なんだけど、いけない?」

「・・ヒックッ・・・公私、れすか?
・・・んじゃ僕も、公私のけじめ、つけますれす、だから、田崎さんの事も、とうこって呼びまふ、いいれすれ⁉︎」

どうせ、酔っ払いだ、今自分が言った事なんか、一晩寝たらコロッと忘れてるに違いない。

「はいはい、いいですよ。好きに呼んで下さい」

だから私は、安易な気持ちでオッケーした。


「っ!!!
ホントにいいんれすれっ?
やった、やった!
・・・じゃあ、もういっこ、僕の事も名前れお願いひまふ」

はぁああ!?

「っ、あなたねぇ・・・」

ドキッ・・・・・

なんなのよおぉお・・・

トロンとした眼差しで、私を見るんじゃなあぁああい!


「とうこ・・・」

なっなっなっなっなっ

何ちゅう甘い声を出すんじゃ!!

「・・・とうこ・・・」

キュッ

私の名を呼びながら、ヨレヨレ君が近付いたかと思うと、彼の指がいきなり私の口元に触れてきた。
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