ヘタレな野獣
「・・・?まだ、何か?」

真っ赤になって俯く私をヨレヨレ君は覗き込んでくる。

「やだああぁあ!」

またしても私ったら、懇親の力で彼を突き飛ばしてしまった。


うわぁあと、声を上げながら、ベッドから姿を消したヨレヨレ君。

「かっ、勘弁して下さいよ・・・冬子さん」


っ!!!!!

やっぱり、名前で呼んだ!

「やだなぁ、そんなに驚いた顔、しないで下さいよ。夕べ、オッケーしてくれましたよね?」

覚えてる、の?

「なんでしたっけ…
そうそう、公私の区別でしたっけ、僕も便乗するって言ったら冬子さん、いいよって、言いましたよ?」

しっっっかり、覚えてるじゃん!

私は頭の中が真っ白になった。

固まっている私を、いつの間にかベッドに舞い戻ったヨレヨレ君が横からそっと抱き締めてきた。

「あの、キスの意味・・・」

えっ?

「僕はどう受け止めれば良いんでしょうか・・・」
「・・・・・」

答えられなかった。

酔った勢いも手伝って、余りにも、我ながら大胆な行動に、今更ながら後悔した。


でも、まさか覚えていたなんて

「冬子さんは、僕に惹かれてるかもと言いました。何故疑問詞なんでしょうか・・・」
「・・分からないの、何であんな事・・・」

正直な気持ちだった。

俯く私は一杯一杯で、それ以上の言葉を紡ぐ事が出来ないでいた。

「冬子さん、僕の方を見て下さい」
「・・・」

無理だよ、顔が上げられないよ。


「これでも、一生懸命駆け引きしてるつもりなんですけど」

えっ?
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