ヘタレな野獣
はぁあ?

この期に及んで何を言ってるの?

「お言葉ですが、先方の意向は課長帯同との事かと?」
「・・・・・」
「会社員である以上、仕事に穴を空けてはいけないのでは?」

だんまりのヨレヨレ君に畳みかけてみた。

「・・・分かりました。
矢野君、悪いのですがこの見積、至急数字を弾いてみて下さい。
お昼頃には戻れると思いますので、デスクにでも置いておいて下さい」

時計を見ながら矢野君に指示を出している。

行くんなら、最初から素直に受けてれば良いものを・・・

面倒くさい男・・・





10分程、軽く資料を見せながら説明を施し、私達3人は二課を後にし、いつもの如く武田君の運転で先方に向かう。


「田崎さん、もう一度資料を見せて頂けますか」
「はっ、はい・・・」


先方に到着するまでの僅かな時間、ヨレヨレ君は車のドアに肘を着いて資料を繰っている。


初めて見るその表情に、私はまたもや魅了されていた。





先方に到着すると、前回通された部屋にまた通される。


「係の者が参りますので暫くこちらでお待ち下さいませ」


頭を下げ、受付の女性はさがっていった。


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