ヘタレな野獣
だって・・・

数字の計算ミスを見過ごしてしまったのだから・・・
あれだけ何度も何度も見直して、なのに、ほんの数分資料に目を通しただけの、それも見積もり過程を知らないヨレヨレ君に、意図も簡単に見つけられ、それを指摘され、言葉を返す事が出来なかったなんて・・・


会議室に向かう途中、私はヨレヨレ君に釘を刺された。

「今回の進行は僕がします。田崎さんは指示がない限り、発言を控えて下さい」


「っ!!!それはどういう・・・「言葉通りです、到着したみたいですよ・・・」


どういう意味か、聞こうとしたけど、どうやら会議室の前まで来てしまったみたいだった。


「失礼致します」

女性社員が会議室のドアを開け、中に誘う。


「失礼致します、新参者の我が社に、またとない機会を与えて頂けた事、大変有り難く存じます。
僭越ながら、早速ではありますが、始めさせて頂きます」


先日のプレゼンとは、会議室に居る顔ぶれが明らかに違っていた。

席の前には肩書き入りのネームプレートがご丁寧にも置かれていた。


社長を始め、取締役と名の付く面々の視線が、私達に注がれていた。


圧倒されて、私は足がガクガク震え出す。

「補佐、資料を・・・」
はっ、
そうだった。

武田君は既に機器のセッティングを終え、壁に張り付いていた。

私は慌てて資料を配り始めた。


あれ?

山下部長の姿が見当たらない。

どうしたのか・・・


「では、始めさせて頂きます。我が社の提案は・・・」


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