ヘタレな野獣
雄馬とは、学生時代の親友で、ヒョンな事から岸田の彼氏になった人物。

かれこれ10年来の付き合いになる。

「雄馬が、何?」
「・・・どうしよっかな・・」
「ちょっと、気になる、何?」

珍しく岸田が煮え切らない。こんな事、滅多に無い。

「今の冬子の話、聞いてたらさぁ、言っていいのかなって、ふと思ったんどけど・・・
あのね?週末雄馬の家に泊まりに行ったんだよね?その時に・・・」

岸田の話は、こうだった。

雄馬の働いてる会社はヨレヨレ君が居た、前の会社の下請けで、数日前に元請けから出向に来てる人が漏らしていたらしい。

《営業の要が他社に引き抜かれて参った。
待遇にしても、給与面にしても劣る会社に、二つ返事で受けたらしい》


「ここで一つ疑問が生じる訳よ。
冬子も、ん?ってなるでしょ?」
「………」


確かに、あれ?ってなる。


当初、アメミヤ ツヨシを引き抜こうとして、実際やって来たのはアマミヤ タケルだった訳だから。

それに、ヨレヨレ君は5年前に事務方に異動しているから、営業のエースというのもかみ合わない。


「だからさぁ、あたし雄馬に聞いたんだぁ、その人の名前……」


私は身を乗り出して、岸田の言葉を待った。


「驚かないでよ?…」





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