ヘタレな野獣
ドキッとした。

ヨレヨレ君の言う通り、例の一件で私は部下に事有る毎に当たり散らしていた。


「今日の昼過ぎからの態度、僕には理解できません。職権乱用と言われても仕方ありませんよ、部下の段取りより自分の都合を優先させる、そんな事はあってはなりません!」

言いたい事言ってくれて・・・

そんな事言われなくても私自身が一番分かってる。

何が上司失格よ、じゃあ、じゃあ自分はどうなの!?


ダメだ、泣きそうになってきた・・・


「もう一度、よく考えてみて下さい。
まずは、部下の立場に立ってみる事、数年前の自分の上司はどうだったのか、よく思い出して見て下さい。
僕が言いたいのは、それだけです。非常識にこんな時間、お邪魔してすみませんでした。
じゃあ、失礼します」
「・・・によ・・・」
「えっ?何か言いましたか?」

ドアノブに手をかけたヨレヨレ君は、私の声に反応して、動きを止めた。


「・・・何よ、偉そうに・・・じゃあさぁ、自分は、何なの?
元営業部のエース、アマミヤタケルさん・?」

私が何にも知らないと思って・・・

「何とか言ったら?よくも今まで騙してくれたわね!?」

眉間に皺を寄せ、ジッと私を見ているだけのヨレヨレ君に、私はそう言った。


「何が事務方よ!思いっきり現役じゃないの!
何にも知らないであなたの世話やいて・・・
ホント馬鹿みたい・・・
私と一緒なら何でも出来そう?
男にして下さい?
よくもあんな白々しい事、言えたものね?
・・・でも私、嬉しかった。
凄く嬉しかったのよ・・・
だからそんな言葉を鵜呑みにして、私なりに頑張ったつもりよ!?けど・・けど!
あなたはそんな私を見て心の底で、笑ってたんでしょ!?」


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