ヘタレな野獣
「そうなんですが、やはり自身の事なので・・・
やっぱり人違いだったんですね・・・おかしいと思ったんですよ、僕・・・」

廊下から部屋には入って来ようとはせず、ドアの向こうでひたすらしょげている男性。

その煮え切らない態度に冬子は声を張り上げた。

「とっとにかく、今日はお引き取り願えますか?
人違いだったとはいえ、このままアメミヤさんを雇用するのは、ちょっと・・・
協議致しまして、必ず連絡致しますので」
「あの・・・アマミヤです、僕・・・」

っ!!!

「しっ、失礼しました、アマミヤさん、・・・
部長?それで宜しいですね?」

少しキツイ言い方だったけど、冬子のイライラもピークに達しようとしていたから、人を気遣う余裕が無い。


「あっ、あぁあ、そうだね、じゃ後の事は田崎君に任せたよ、田中部長、行きましょうか」

「そっ、そうですね、山田部長、貴方はデキる部下をお持ちで幸せ者ですなぁ、いやぁ羨ましい限り」

「はっはっはっ」「はっはっはっ」


2人の部長は仲良く肩を並べて会議室を出て行った。


・・・・・


やってられない!!!

バンッッッ!!!

会議用の円卓に、持っていたバインダーを挟んだファイルで思いっきりぶっ叩き、ハァハァと肩で息をする。


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