ヘタレな野獣
年に一度行く、彼の実家のお父さんは、会う度にそう繰り返している。


『とこちゃんはまだ若い。いずれ遠くない将来正直よりもずっと素敵な男性がとこちゃんの前に現れる。その時とこちゃんがアレに捕らわれたままだとしたら・・・
だから一刻も早く思い出に変えなさい』


それが今、なのかな・・・

ねぇ正君、正君はそんな私を薄情だと思うのかな・・・





RRRR・・・



ん・・・

電話、?・・・


ゆっくり目を開ける、あっ、私いつの間にか眠っていたんだ・・・

鳴り続ける電話に近付き徐に受話器をとる。



「はい……」
『やっと捕まりました』

は?

「あの、どちら様ですか?」

まだ覚醒しきらぬ頭、受話器を取っていきなりそんな事、言われて警戒しないなんて有り得ないし。


『あっ、すみません、僕です、雨宮です』

っ、ドッキンッ!!!

『冬子さん、分かりますか?雨宮ですが…』
「わっ、分かってるわよ!ってか、何かご用?」
『あははっ、ご機嫌斜めですか?
いや、特に用って程の事では無いのですが・・・』
「・・・だったらかけてこなければ良いんじゃない、切るわよ・・」『ちょっと待って下さい、ナイター、見に行きませんか?』
「なっ、ナイター・・・ですかぁあ?」

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