ヘタレな野獣
突然電話かけてきて、ナイターって・・・

「あの、私野球には興味ありませんから!」
『えっ?いや、野球じゃなくて、シアターの方なんですけど・・・』

あぁ、映画ね・・・

ってか、それってレイトショーじゃん、

『鑑賞券を頂きまして、もし、お暇ならと・・・』

時計を見ると既に夕方17時を大きく回っていて、一体私は何時間居眠りをしていたのかと驚いた。

『冬子さん?
ご一緒しては貰えませんか?』

映画なんて、ここ何年も見ていない。

特に用事もないし、何よりヨレヨレ君が私を誘ってくれたのが嬉しかった。

けど、ここ数年恋愛から遠ざかっていた私は、何かにつけて照れを隠す為、気のない立ち振る舞いをしてしまっていた。


『実は、もう家、出ちゃってまして・・・
後数分で冬子さんのマンションに到着します・・・』
「はぁあああ!?」


まだ行くとも行かないとも答えてはいないのに、私ん家に向かってるなんて・・・


『下で待ってますから、用意して降りてきて下さい』ツウツウツウ・・・
「えっ?ちょっ、待って!」

私は受話器を置くや否やベランダに飛び出し、彼が来るであろう方向に目を向けた。


「うっそ・・ホントに来ちゃったし・・・」


私は慌てて化粧直しをして、洋服がシワになっていないのを確認し、置きっぱなしだった鞄をひっつかみ、部屋を飛び出した。


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