ヘタレな野獣
「いっ、家に居なかったかも知れないのに?」

だって、そうでしょう?
別に約束していた訳じゃないし、それに、私が家に居たとも限らない。


なのに・・・


「携帯、オフにしてませんでしたか?」

えっ?

そういえば、私は家に帰ると、携帯の電源を切る癖がある。


余程の事が無い限り、電源は落とす。


「僕だって、学習しますよ。この前僕が何度も携帯にかけた時もオフになってましたから・・・」
「ちがっ、あの時はバッテリー切れで・・・」
「だから、家に居る時は携帯オフ、携帯オフの時は、家に居るんです」

ニッコリ笑いかけるんじゃない、ドキドキするじゃない!


「冬子さんを下で待ってる時に予約の電話、入れました」

・・・・・

卒がない、ヤッパリこいつはただ者じゃない。


意識し過ぎて会話が続かない中、予約時にオーダーしておいたのだろう、頼んでもいないのに、料理が運ばれてきた。


「ここのフィレはホントに旨いんです、ささっ、食べて食べて」

・・・

「あらあら、そんなにせかしちゃ、彼女食べ辛いじゃない、ねぇ・・・」


えっ、私はその声の主の方へ顔を上げて、固まった。


えぇえええ!?


「クククッ、ほら、マスター、彼女驚いちゃってますから、もう下がって下さいって・・・」
「っ!!!失礼ねぇ、驚いてなんか、いないわよ、ねぇ?
でも、今夜は許しちゃう。こんな素敵な彼女連れてきたの、初めてだもの。
少し妬けちゃうけど、邪魔者は退散するわぁ、どうぞごゆっくりぃ・・・」


< 85 / 148 >

この作品をシェア

pagetop