ヘタレな野獣
「そこ!私語は謹みなさい、今は会議中です!」

山部課長の一喝で一同は静かになる。


「それでは第一の課題ですが・・・」

淡々と会議は進行していく中、刺さるような視線を感じ、顔を上げた。


向かいの席から睨み付けてくる下柳だった。


ゾクッ・・・


視線を外せないままいると、ニヤッと笑って視線を反らしたのは下柳だった。

絶対何かを企んでいる、間違いない。

でも、私にはそれを阻止する術を持ち合わせてはいない、どうしよう、・・・


気持ちだけが空回りする。

どうか何事も起こりませんように・・・

私はただただそう祈るしかなかった。



二時間の予定の会議は、そろそろ終盤を迎えようとしていた。

「えぇえ、議題は全て出終わりましたが、他に何かございますか?なければこれで・・・」



その時、下柳が中腰で上座に座る一課の矢野課長の元に歩み寄った。


何を話しているのか分からなかったが、矢野課長は仕切りに首を横に振っている。

そんな二人を見かねた山部課長が声を掛けた。

「矢野課長、何かございますか?」
「・・・、いえ、何もございません」

その言葉に、下柳はチッと片目を細め、いつもの憎たらしい顔をして自席に戻ってきた。



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