雫に溺れて甘く香る
温度差
*****



最初のうちはお互いに戸惑ったり困ったり、実は静かに言い合ったりしていたけど、あっという間に夏が過ぎて季節は秋めいてきた。


週末の朝はいつも疲労困憊……。

前日の疲れと、多少は多めに飲んだお酒が少し残っていて、目覚めは確実に遅い。

微かに目を開けて、それから見慣れた部屋の天井を見る。

いつもと代わり映えのない私の部屋。そのオフホワイトの天井。

ベッドサイドの目覚ましはカチコチと無機質な音を奏でて……それに合わさる様に、聞こえてきた吐息にホッとする。

ゆっくり振り返ると、そこにはぐっすり眠っている続木さんの顔。

私が休日の前の日には、泊まりに来るのも当たり前になってきた。


眠っていると可愛いなぁ。

……可愛いなんて言うと、冷たい視線が返ってきそうだけどねー。

直接肌に触れる暖かさは心地いいけれど、いつまでも横になっていられないし。

起こさない様にそっとベッドを抜け出し、フローリングの床の冷たさに肩を竦め……。


「……そんな格好でどこ行くんだ?」

低く響いた言葉に、背筋を伸ばした。

振り返ると、バッチリと開いている彼の店に目が少しだけ笑っている。


「いい眺め」

「……わざわざ言うこと?」

「じゃないと、すぐ着替えだすからな」

「……寝たふりは相変わらずだね」

クローゼットから新しい下着を取り出していると、続木さんは肘をついて起き上がった。


「意味ないんじゃないか?」

「何が」

「どうせすぐ脱ぐから」

「は……?」

言った瞬間、お腹を持たれて足が宙に浮き──……。


ベッドに転がされた。
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