雫に溺れて甘く香る
「出かけるって言っている」

「は?」

「は、じゃない」

不機嫌そうに言われて、あんぐりと口を開けてしまう。

いやいやいや。今のって相談になってないからね?

どっちかっていうと、ただ淡々と一日の予定を呟いていただけだから。


……と言うか、聞かれてた?

今のは問いだった?

相談はともかくとして、出掛けたいと言う意思表示はしているらしい。


「……デート?」

ポツリと聞いてから、小首を傾げる。


「馬鹿女」

めちゃくちゃあっさりと、ズキッとくる言葉を頂いた。

どうもデートじゃないらしい。けど、同行はしろって言うこと?

眉を寄せながら彼を睨む。

「解るわけないでしょうが」

「悟れ」

どこの聖人だよ。意味のわからないことを言われて悟れる程、私は察しのいい方じゃないんだからね!

「勝手な事を……」

「俺は別に、行かなくてもいいけどな」

用事があるから出掛けるんじゃないの?

それならそれで……。いや、それは困るかも知れない。

だって……続木さんてけっこうスケベだから。
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