雫に溺れて甘く香る
一緒の休みなんて、実は付き合ってから初めてで、しかも彼は何を考えているのかわからないし。

「……運動は疲れる」

海に行ったとして、今の時期にどう運動するつもりなんだろ。

砂浜を走るとか? まさかねー?

「明日は仕事なの?」

「ああ」

「仕事の前の日にはゆっくりしたいんだ、とか言い始めているとしたら、親父みたいだね」

卵焼きを食べながら呟くと、むっとした視線と目が合った。


……冷たいけれど、凍てつく程では無くなった視線。


そもそも顔が整い過ぎる人ってのは、表情も冷たく見えるからねぇ。
そう思って見ると、案外表情が変わる人だと思う。

出会い方や、辿ってきた経緯がどこかおかしい私たち。

脇にあった灰皿替わりのお皿を突き付けると、続木さんはそこに灰を落としてからタバコを消す。

「食ったらシノのとこに行くからな」

「了解」

その言葉に満足したのか、続木さんはニヤリと笑った。



そして篠原さんの家までいって車を借りて、それなりに混雑している車の波を抜ける。

涼しい風に綺麗な空気。見上げる空は秋晴れだ。

景色は少しだけスモッグがかかっていて、ちょっぴり残念だったけど、それなりにドライブは楽しい。

続木さんの用事が一体なんだったのかは謎だったけど、通りすぎる景色を堪能して、パーキングエリアでソフトクリームまで食べた。

「ガキかよ」

「うるさいな!」

ちょっとだけ言い争いになったのはご愛嬌だと思う。









< 105 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop