雫に溺れて甘く香る
***




そして日曜日。

『今日は仕事だから』と帰っていった続木さんを見送り、少し時間は遅いけど家の中の掃除や洗濯物を終わらせて……。

なんだろうなぁ、なんて……ちょっと考える。

確かに、たいして期待はしてなかったけど。

付き合うっていうのは、もっとこう……熱いものじゃないのかな?


続木さんと私じゃバカップルになりようがないけど。だからと言ってコレじゃ、前と変わらないんじゃないだろうか?

暇な時はご飯に誘われて、週末には泊まって、そして抱かれて。

翌日には“またね”で見送る。


続木さん的にはアレが“告白”になっているらしいけど、私にとってみれば何か違うし。


何となく“好き”でいてくれているんだろうな……ってのはわかるけれど。

何となく“好き”では足りない。
全然足りない。もの足りない。
私が“好き”な分だけ足りなくなる。
どうしても温度差を感じてしまう。

それを感じているのに、何も言えない……。

言ったら面倒な顔をされそうで。続木さんならとても有りそうで。


間違いなくこれは現実。


溜め息をついてソファに座ると足を組んだ。

まぁ……理想と現実が違うのは当たり前だよね。

当たり前だけど……喜ぶべきだろうけど、喜べないのが何か悔しい。

悔しいって……少し違うか。支離滅裂だな。


「……買い物行こう」
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