雫に溺れて甘く香る
鍵
*****
そしてあっという間に週末。今週は残業続きで大変だった。
会社でコンビニ弁当は飽きました。
金曜日、やっといつも通りと言えばいつも通りに仕事が終わり、久しぶりにお店に顔を出す。
「いつものお願いしますー」
誰もいないカウンターに座りながら、早くもカクテルを作り始めた篠原さんに告げる。
……この人、私が違うカクテルを頼んだらもったいないとか、本当に思わないんだろうか。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませより先にカクテルを作り始めるのは篠原さんだよね」
「工藤さん変えないから……って、僕がここにいる時に、違うの注文したことはないでしょう?」
……そもそも勝手に作ってるじゃないか。
でも、冒険心が少ないのは認める。
新しい物にすぐに飛び付いたりしない方だし、きっかけでもなければ新しいお店にも入ることは少ないし。
「定番になってるよね。じゃ。次は違うのにしよう」
近くにあったメニュー表を眺めていたら、背後から頭をグシャグシャにされた。
「……なんっ!」
通りすがりの続木さんは、何事もなかったかのように自動ドアから入ってきたお客様を出迎えに行く。
「…………」
あんたは何がしたい。
手櫛で髪を直していたら、篠原さんがそれを見てニヤリと笑ったのが視界の端に入った。
「工藤さんは、素直そうな髪質してますよね」
「え? 素直そうな性格?」
「そうなんですか?」
「篠原さん。わかっていて聞いているでしょう」
思わず目を細めて半笑いした。
そしてあっという間に週末。今週は残業続きで大変だった。
会社でコンビニ弁当は飽きました。
金曜日、やっといつも通りと言えばいつも通りに仕事が終わり、久しぶりにお店に顔を出す。
「いつものお願いしますー」
誰もいないカウンターに座りながら、早くもカクテルを作り始めた篠原さんに告げる。
……この人、私が違うカクテルを頼んだらもったいないとか、本当に思わないんだろうか。
「いらっしゃいませ」
「いらっしゃいませより先にカクテルを作り始めるのは篠原さんだよね」
「工藤さん変えないから……って、僕がここにいる時に、違うの注文したことはないでしょう?」
……そもそも勝手に作ってるじゃないか。
でも、冒険心が少ないのは認める。
新しい物にすぐに飛び付いたりしない方だし、きっかけでもなければ新しいお店にも入ることは少ないし。
「定番になってるよね。じゃ。次は違うのにしよう」
近くにあったメニュー表を眺めていたら、背後から頭をグシャグシャにされた。
「……なんっ!」
通りすがりの続木さんは、何事もなかったかのように自動ドアから入ってきたお客様を出迎えに行く。
「…………」
あんたは何がしたい。
手櫛で髪を直していたら、篠原さんがそれを見てニヤリと笑ったのが視界の端に入った。
「工藤さんは、素直そうな髪質してますよね」
「え? 素直そうな性格?」
「そうなんですか?」
「篠原さん。わかっていて聞いているでしょう」
思わず目を細めて半笑いした。