雫に溺れて甘く香る
イキナリ話せと言われてもねぇ。

何だか部屋の様子に圧倒されそうなんだけど。

でも……いい機会だから、聞きたい事を聞いてみようか。


「……中野さん。私たちが付き合ってるの知らないの?」

「アイツはうるさいから」

……かも知れない。中野さんのキャラは何となくわかる。

一瞬で騒いで、まわりを巻き込むキャラをしてると思う。


「篠原さんは知ってるの?」

「アイツは……人の顔色を読むのが昔から得意だ」

……それも、何となく理解出来る。

篠原さんだけが、私の視界の先に続木さんがいることに気がついた。


でも、その言い方はどうだろうか? 仮にも友人なんだろうに。

篠原さんは“続木さんを殴る”的な事を言うし、続木さんは“篠原さんは顔色を読む”とか言うし。

お互いにあまり良い言葉じゃないんだけど、仲良~くお店をやってるわけで、男の友情は女の私にはイマイチよく解らないんだよね。


「お前の位置付けが、客から俺の彼女になったから……」

続木さんは言葉を続けていて、瞬時に物思いから戻ってくる。


「……なったから?」


なんだと言うつもり?


「……お前もアイツにからかわれる」


どうやら、私は篠原さんにからかって頂いていたらしい。

からかうのはダメだよ。と、思うのと同時に、ちょっとだけ“こんにゃろう”と心の中で舌打ちした。
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