雫に溺れて甘く香る
お互い様
*****



ほぼ同棲みたいになってから数週間。

私は夜中に目が覚めないたちだけど、少しの振動でも続木さんが起きちゃうのが可哀想な気がしてきた。

寝不足はダメだと思うんだよね。

お互いに社会人なんだし、体調管理もしないといけないんだし。

だから、どうしようか迷ったけど、土曜日の夜にコンビニの袋を片手に帰ってきた続木さんを出迎えて、布団を買う話をしたら思いっきり顔をしかめられた。


「……不服なの?」

「お前のベッドセミダブルだし、別にいいだろ。これから寒くなるんだし」

「貴方は体温高いでしょ」

「抱き枕がなくなる」


……そういえば、いつも人の身体に絡み付いてるよね。

って、勝手に抱き枕にしないでほしいんだけど。

その抱き枕は朝になると動き出すんだし、だから毎朝起こされるはめに陥るんでしょうが。


「続木さんって、抱き枕好きなの?」

「好きだな」

ふーん。そうなんだ。じゃあ、布団と一緒に抱き枕が必要なんだなぁ。

「明日休みだったよね?」

「そうだが……」

続木さんはコンビニのビニール袋をテーブルに置いて、ジャケットを脱ぐと、ソファに座った私の目の前にあぐらで座る。

そして何を思ったのか、私の膝に腕を乗せて人の顔を覗き込んできた。

「……一緒に寝たくない?」

「あ。いや。そういうわけじゃなくて、私が起きるのとほぼ同時に続木さんも起きちゃうじゃない。別々に寝た方が……」

「どっちにしろ、お前が寝てる方に入るから無意味だぞ?」

おう。それなら確かに無意味だな。
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