雫に溺れて甘く香る
「だ、抱き枕も買うよ……?」

戸惑いながらも彼を眺めてたら、今度は無言になってしまうから、じわじわ恥ずかしくなってくる。

なんだろこれ。いつもは上から見下ろされているから、それは慣れているんだけど、下から見上げられているのは慣れてない。

いつもと違う視線は、抱かれている感覚を思い出すと言うか……何だか甘えられている気分になる。

具体的に甘えられてもいないのに、何故だ。


「……一緒に寝るのが嫌だってわけじゃないんだな?」

「え?」

嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、だからこそ考えるんじゃないか。

「朝起こされても、どうせ二度寝するんだから気にする必要はない」

「え……そうなの?」

「けっこう昼までゴロゴロしてるし、そこ気にしてんなら気にすんな」

ああ、そうなんだ。休日の貴方って、いつも朝からテキパキ起きてくるからそのイメージがあったよ。

そっか。ちゃんと寝てるなら……。


とは言え、じゃあ一緒に寝ようかとは言いにくい。

何も言わずに黙っていたら、続木さんがふっと笑った。

その笑顔が“お前は仕方ない奴だな”とでも言いたそうで、しかも、初めて見るような可愛い微笑で、ボンッと爆発するように顔が熱くなる。


「次はタブルベッドでも買うか?」

「え。さすがにこの部屋じゃ、ダブルは大きいよ」

「だから次は」

……意味がわかんないし。
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