雫に溺れて甘く香る
なんだ、この子供みたいな仕草は。

見た目は無表情の癖に、眼はキラキラ期待してるみたいに輝いてるし、心なしか楽しそうじゃない?

全くなんて眼で見てくるつもり……。


あ。いや。考えをまとめようか。

こんなものをいきなり持ち出されて驚いたけど、それってどういう事なんだろう。

……って、私だってバカじゃないんだし“別々に部屋借りてないで、一緒に住もう”と言っているくらいはわかるんだ。

わかるけど……。

「いきなり家は無いでしょう?」

「まぁ、俺も、お前はそう言うと思ってたんだけどな」

「ここが手狭なのはわかるけど、職場から離れたら面倒じゃない? 貴方はいつも夜中になるんだし、電車に乗らなくていい距離って大切でしょ?」

彼の借りている部屋と、私が住んでいる部屋の、ちょうど中間点にお店はある。

免許は持っているけど車は無いんだから、離れたところに住むと帰りが大変だと思うし?

「近所で、二人で住めるくらいの広さの物件借りた方が現実的だよ」

確かに今も同棲っぽくなってるけど、一緒に住もうとか約束したわけではないんだし。

でも、ちゃんと考えてくれるのは素直に嬉しい。

「将来的には一戸建てもいいんじゃないか?」

「将来……って」

何を言ってるんだ……と、笑いかけて真顔になった。
< 124 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop