雫に溺れて甘く香る
私の好み……?

「部屋の内装見てたら女だなって思うが、格好はなんか違うし」

自分の格好を見下ろして首を傾げる。

今日は黒のハーフパンツに、ロゴ入りのパーカーを着てるけど。部屋着なんて、こんなもんでしょ?

逆に私がピンクのふわふわモコモコの部屋着を着てたらビックリでしょ。

「格好が女らしくないのは仕事柄なんだろうが、なんかお前は気の強い女に見せているから……」

「喧嘩っぱやいとは言われてる」

「それは知ってる。けど……たぶん違うだろ?」

違うって何が?

気が強そう、サバサバしていそう、そんな言葉は言われ慣れているよ?

「実は泣き虫だし、小心者だよな」

それは……初耳だ。

「聞かれても、その言葉を肯定する人はあまりいないと思う」

「聞いた訳じゃなくて、確認しただけだ。確かにお前がピンクのフリフリワンピースなんて着ていたら驚きだが、そういう女の思考は案外わかりやすい」

ピンクのフリフリワンピースを着ている人は見たことないけど、なんとなく想像つく。

私は“可愛い”って主張していて“可愛がられる”のが当たり前で、口調も仕草も“可愛い”を目指していると思う。

どう考えても私のキャラではない。

今更しなをつくって可愛がられる為に奔走するはずもないし、だいたいそんなことしたら気持ち悪いだろう。

……主に私が。

「可愛いものを見てるのは好きだよ」

「俺が可愛いか?」

「ううん。あなたはふてぶてしい」

きっぱり言いきったら、胡乱な眼で見つめられた。
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