雫に溺れて甘く香る
「それで、工藤さん。今日の飲み会はいかがでしたか?」

急に変わった話題に眉を上げながら、わかりにくいけど、それが篠原さんの優しさなのかな……と納得する。

「あー……全然ダメ。初対面でベタベタしてくる男か、全くだんまりかのどっちかだったし。私も久しぶりの飲み会だったから」

もう、ベタベタボディタッチしてくる人は“遊びたい”とアピールしてくるし、黙ってる人は私に“興味ない”とアピールしてくるし……。

総合的にそれじゃ、私も“あんたたちには興味ないから”とひたすら走るしかなかった。

「でも、同僚のセッティングなら、相手はそこそこのエリートでしょう?」

「まぁね。秘書課から声かけられた合コンだったから、相手はそこそこの商社の人だったけど……あれならうちの会社の人の方がエリートだよ~?」

「秘書課なんてあるんですね。そういえば、工藤さんはどこの会社なのか聞いたことがなかった」

ああ、まぁ。話題にすることでもなかったしね。

バックを開けて名刺入れを取り出すと、スッといつものようにきびきびと両手で名刺を篠原さんに差し出す。

「工藤悠紀と申します。よろしくお願いいたします」

「うわ。バリバリの営業ですね」

「私なんてまだまだ。まだ入社2年目だもん」

そんな事を言っているうちに、いつものパスタが届いて、手が空いたのか会話に中野さんも加わった。
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