雫に溺れて甘く香る
結局、篠原さんに営業妨害だと睨まれて、店からタクシーを使って家に帰ってきた。

お互いにシャワーを浴びて身体を暖め、着替え終わってから向かい合って座る。

「暖まった?」

「お前は……?」

「私は一瞬だったし。タクシー使ったわけだから、そんなに寒くなかった」

二人で床にそのまま座っているけど、無表情の続木さんにだんだん気詰まりになってくる。

色んな事が立て続けに起こって、何から何までワケわからないんだけど。

でも、こういう時の続木さんて……と思って顔を覗き込むと、困ったような目をしていた。


困ってんのは私だー!


「えーと。続木さんは彼女とつきあっていたんだよね?」

「一応……」

「キスもしなかったの?」

一番聞きたいことを手っ取り早く聞いてみたら、彼の上体が微かにのけ反った。

「直球過ぎるだろ」

「私たちの関係性でのらくらしてたら答えに行き着かないじゃないの。2年も付き合っていたんでしょ」

続木さんの表情が途端に不機嫌なものに切り替わる。

「シノか……」

「世間話の範疇でしょ。詳細を聞いたわけじゃないからね」

それにしても2年もつきあっていながら、キスすらしない関係性って何?

続木さんって、その……私にはいろいろするよね?

確かに私は初めてってわけじゃないけど、彼女はそんなに大切にされていたわけ?
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