雫に溺れて甘く香る
そんな感じで美味しくご飯も食べ終わり、珍しくダイキリをおかわりする。

それがカウンターに置かれる頃、続木さんの彼女と、その友達がレジ前に立っている姿が見えた。

続木さんも微笑みを浮かべながら、レジを打っている姿が見える。


キャッキャッと楽しそうですこと。


「そうだ工藤さん。これに住所を書いてくれます?」

篠原さんが声をかけてきて、葉書大のカードをカウンターに置く。

「なぁにコレ?」

「うん。近々……って言っても、もう少し先の話なんだけど、移転考えていて。移転したらハガキ出したいし」

「えー。移転しちゃうの? せっかくうちから近いのになぁ」

「そうなんですね。でも、そんなに遠くに移転するつもりもないから」

移転するなら、その時までかなぁ。

見てると辛いんです……とまではまだ行かないけど、見ていたって仕方がないし。それなら視界に入れない方が健全だ。

そんな事を考えながら、渡されたボールペンで連絡先と住所を書く。

書き終えたところで、テーブルを片付け終わった続木さんがカウンターに戻ってきた。

「疲れた……」

「お疲れさま」

カードを篠原さんに渡して、カクテルを飲んでいたら、彼はチラッとだけ私を見て、ポケットからガムを取り出す。

「……煙草吸いたい」

ブツブツと文句を言うようにガムを食べている姿を見て首を傾げる。

「吸ってくればいいじゃない。一段落したんでしょう?」

見ると、テーブル席には1組しか残っていない。

これなら行けると思うし、今までちょくちょく隙を見ては抜けていたよね?

あれって煙草を吸いにいっていたんでしょ?
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