雫に溺れて甘く香る
「濡れた女が、こんなに色っぽいとか思ってなかった。髪がペッタリ頬に張り付くように乱れていて、スーツの下のブラウスも濡れていてレースも見えていたのに、頓着してなくて……」

え。そうだったの?

それってちょっと恥ずかしい。
言ってくれたら……いや、言われたら困るけど。


「普通なら保護欲そそられそうなもんだが、眼だけは力強くて。興味深そうに見返された時に思ったのは“抱きたい”って思いだけでな」

見たこともない微笑みを浮かべながら、そんなことを言われても。

……色んな意味で本当に困るんだけど。

「だけど襲うわけにもいかないし、とりあえず遠ざけておけば通りすがりで終わるだろう? だけどそうはならなかったんだよな」

私を見ながら、目の前の私を見ていない続木さんは、ふっと視線があった瞬間にパッと横を向いた。

「だから。俺の方が先なんだ。つきあってる女がいながら、他の女に反応するとか、あり得ない」

横を向きながらボソボソと呟く彼を見ながら、両手で頬を押さえる。


……頬が熱い。


あの時、私は背が高い人だなって思った。そしてとても綺麗だと思ったのよ。

綺麗な眼をしている人だな……って。


「最低だろ。前の女と別れてもいないのに、お前に手を出すとか。それもこれも我慢出来なかった俺が悪い。突っぱねる事だって出来たんだし」

ブツブツ呟いてる彼に、ますます体温が上昇していくのがわかる。

わかるけど、どうしよう?
< 151 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop