雫に溺れて甘く香る
まさか、ここまで明け透けな告白を聞くことになるなんて思ってもみなかった。

常識的にはどうだろう。

確かに私たちのしたことは褒められたものじゃないけれど、そんなもの関係なく“私は続木さんが好き”で、普通に嬉しいと言うか……。


「私は……彼女に遠慮しなくていいのかな」

「は?」

「どこかで……きっと頭の片隅で、いつも“ごめんなさい”って思ってたから……」

眼を伏せて呟くと、カタンと音がして続木さんが近づいてきた。

「悪いとは思ってる。でも、俺は後悔はしない。だから……お前もするな」

近づいてきた彼に手を伸ばすと、すっぽりと抱きしめられて安心する。

温もりが心地いい。

考えていたら、頭上で小さく笑われた気がした。


「お前は我が儘もあまり言わないから、どうしてやればいいか困るけど」

「うん……?」

「行動は甘えてくるよな」

な、なななにを、いきなり言ってんのよ!

思わず引き剥がそうとしたら、力強く抱き上げられた。

「な……っちょ……!」

しがみつくしかなくて慌てると、彼はスタスタと移動して、あっさりベッドの上に寝かされた。

「久しぶりだし、手加減できないかもしれないが、抱きたい」

すぐ間近に見える続木さんが真面目な顔をして囁く。


……なし崩し的に抱かれる事は多いけど、聞かれたのは初めてかもしれない?


「……お手柔らかに?」

言いながら続木さんの首に腕をまわして引き寄せると、彼は小さく微笑んだ。

そんな可愛い笑顔は、ちょっとずるいと思うなぁ。そんな事を考えていたら……。


「いや。それは無理だけど」


とんでもない事を言われて唇が重なった。

もちろん。お手柔らかに……なんてものは端から無視されたわけだけど。

翌朝昼過ぎに目が覚めて、やっぱり後ろめたいのは確かだけど……とても幸せな気分だった。









< 152 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop