雫に溺れて甘く香る
酔った者勝ち
*****



季節の移り変わり、街中にクリスマスネオンが輝きだす頃、一年は早いな……と感じてしまうのはこういう時だ。

【今日は出勤だから】

そんな単文がメールで送られて来たのはクリスマスイブ当日。

……別にね。クリスマスだから何かしようって思っていたわけでもないし、気にしてなんてないけどね。


何故、朝起きたときに言わない。


飲食業だもん、クリスマスにお店休みはあり得ないでしょ。
わかりきったことだよ。

眼を細めながらスマホを眺めていた。


「あ~。うまくいったんだ?」

急に背後から聞こえてきた声に、スマホをパッと伏せて振り返る。

「村田さん。覗き見はどうかと思うんです!」

「10分近くも眉間に皺寄せてスマホ眺めていたら、なんだろうとは思うだろ。工藤さんはなかなか相談してこない人だし」

「相談する時はします」

「そう? まぁ、いいけど。会社のあぶれた連中を誘って飲みに行くけど……君は行かないね?」

「あれ。村田さんは予定ないんですか?」

「そうだよー。どうしてなのか、いつもいい人で終わるんだよなぁ」

ブツブツ首を捻る村田さんに吹き出したら、叩かれる真似をされた。

まだ私はいい方かな?

そんな風に考えると“店に行けばいいだけ”とも思えるし。

残業を嫌がる同僚の雑務を引き受けたら、とても喜ばれた。

やっぱりクリスマスイブは、特別な日なんだろうなぁ。
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