雫に溺れて甘く香る
髪を直して唇を尖らせていたら、カウンターの脇にさっきの女の子が立っていた。
「篠原さん」
呼ばれた篠原さんが顔を上げると、彼女は着けていたエプロンを差し出す。
「会社からメールが来て、帰らなくちゃいけなくなった」
ニッコリ笑って小首を傾げた彼女に、私の頭にハテナマークが浮かぶ。
会社からメール?
「ああ……解った」
そう言ってカウンター越しにエプロンのやり取りをしている二人にますますハテナマークが増えていく。
「……またな?」
篠原さんはそう声をかけていたけど、彼女は無言で荷物を持つとそそくさと店を出ていってしまった。
……けど、会社って?
「……新人アルバイトさんじゃないの?」
彼女を黙って見送っていた篠原さんが、不機嫌そうに振り返る。
「俺の知り合い」
「え。あ、ああ、そうなの?」
不機嫌な篠原さんなんて初めて見たけど、彼はそのまま次のドリンクを作り始めた。
それでもそのうち機嫌の直った篠原さんが、注文もしていない私に淡い色のカクテルを作ってくれ……。
「今日のクリスマススペシャルだよ」
……と、にこやかに中野さんがカルボナーラとローストチキンの乗ったお皿とサラダが盛り付けられたボウルを置き──こちらも注文していないけど……。
それを見つけて、続木さんが篠原さんに不機嫌そうに声をかけた。
「なんでこいつが賄い飯食ってんだ?」
……賄いのご飯なんだ。
本当にお客様扱いされてないんだ、私は。
ある意味嬉しいと言うか、ちょっぴり複雑だ。
「篠原さん」
呼ばれた篠原さんが顔を上げると、彼女は着けていたエプロンを差し出す。
「会社からメールが来て、帰らなくちゃいけなくなった」
ニッコリ笑って小首を傾げた彼女に、私の頭にハテナマークが浮かぶ。
会社からメール?
「ああ……解った」
そう言ってカウンター越しにエプロンのやり取りをしている二人にますますハテナマークが増えていく。
「……またな?」
篠原さんはそう声をかけていたけど、彼女は無言で荷物を持つとそそくさと店を出ていってしまった。
……けど、会社って?
「……新人アルバイトさんじゃないの?」
彼女を黙って見送っていた篠原さんが、不機嫌そうに振り返る。
「俺の知り合い」
「え。あ、ああ、そうなの?」
不機嫌な篠原さんなんて初めて見たけど、彼はそのまま次のドリンクを作り始めた。
それでもそのうち機嫌の直った篠原さんが、注文もしていない私に淡い色のカクテルを作ってくれ……。
「今日のクリスマススペシャルだよ」
……と、にこやかに中野さんがカルボナーラとローストチキンの乗ったお皿とサラダが盛り付けられたボウルを置き──こちらも注文していないけど……。
それを見つけて、続木さんが篠原さんに不機嫌そうに声をかけた。
「なんでこいつが賄い飯食ってんだ?」
……賄いのご飯なんだ。
本当にお客様扱いされてないんだ、私は。
ある意味嬉しいと言うか、ちょっぴり複雑だ。