雫に溺れて甘く香る
そんな中でも、中野さんが勝手に篠原さんの冷蔵庫のものでおつまみを作り始め、戻って来た二人と一緒にクリスマスパーティーぽい宴会になった。

……楽しい時間って短いって思う。

思いきって話しかけたら、あっという間に彼女と話が合って……。

主に“店内にいる二人が無愛想で、奥にいる中野さんが一番愛想がいい”とか盛り上がる片隅で、彼女は……無言でコッソリ篠原さんの手の甲を抓っていた。

なんだろう、お互いに知らんぷりしていて可愛い感じだ。何て言うか……可愛いとしか、言いようがないと言うか。

篠原さんのブカブカの服を着て、ソファーに寄り掛かる城島さんを見ながら、そして彼女がカパカパと開けていく缶ビールを見ながら、少しだけうらやましいかも。

……なんて考える。


そのうち、城島さんがうつらうつらし始めて、それを黙って見ていた篠原さんが膝枕し始めて……。


「うらやましい……」

パッと皆の視線が集まった。

「……あれぇ?」


……聞こえていたの?


「続木んにしてもらえばいいじゃん」

「いや。続木はやらねぇよ」

中野さんの言葉にすかさず篠原さんが片手を振る。

さすが友達。よく解ってらっしゃるよね。

当の本人はだんまり決め込んで、煙草吸ってるけど。
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