雫に溺れて甘く香る
「何を要求してるんだ?」

ぶっきらぼうに聞いてくるから、ずりずりと膝で歩いて続木さんの目の前に正座する。

それから彼を覗き込んで、胡座をしている膝に手を置いた。

「続木さんて、解んないんだもん」

「……何がだ」

「クリスマスなのに、何でこんなとこにいるわけよ」

「はぁ?」

「私だってイチャイチャしたい!」

「おま……っ!? イキナリ何を言ってんだ?」

篠原さんと私を交互に見る続木さん。

焦ってる。慌ててる。なんか可愛いなぁ。

「お前、何笑って……」

言いかけた続木さんが私が持っていたグラスに気がついて、それを取り上げられた。

「何飲んだ?」

「えー……と。甘いオレンジジュース? 城島さんにもらったの」

「え? いつの間に?」

篠原さんの驚いた声に、続木さんが片手で顔を覆った。


「お前……駄目だろ」

何が?

「城島さんはウワバミなんだから、彼女の飲むなんて自殺行為……」

「蛇?」

城島さん悪口言われてるの?

「彼女はお前と違って、酒が強いんだ」


へえ。そうなんだぁ?


「この酔っ払いが」

「酔ってないよ」

「酔ってなくて、あんなコトおまえが言うか」

どんな事?

「私は何か言った?」

首を傾げたら、何故か黙り込まれた。

「何よ。なんか言いたそうじゃない」

「何も」

視線を逸らそうとするから、膝の上によじ登って顔を覗く。

「何よぉ~。言いなよ」

「だから、何も……」

「可愛いなって」

中野さんがニッコリ答えて、篠原さんが忍び笑いをもらした。
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