雫に溺れて甘く香る
えー……っと?

何とも言えない表情の篠原さん。

顔を真っ赤にして笑いを堪えている中野さん。

それから、ニヤニヤと煙草を燻らせている続木さんが口を開き……。


「殴られてるんだ?」


その言葉に、篠原さんの鋭い視線が突き刺さる。

「うるせぇよ」

「篠原を殴る女は、初めて見るな?」

篠原さんはしばらく沈黙して、無言で続木さんに片手を伸ばした。

「煙草……」

「自分の吸え」

「取れって言ってんだ」

彼女を膝に乗せてるから、動くに動けないらしい。

そして満面の笑顔……と言うよりは、どこかひょうきんに歪んでいる中野さんが、篠原さんに煙草を渡してあげる。

それに火をつけて、篠原さんは溜め息にも似た煙を吐き出した。

「まぁ……なんだ」

「ああ」

「足はよく踏まれたし、鞄で殴られたか」

「…………」


それって、別に言わなくてもいいと思うんだけど違うのかな?















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