雫に溺れて甘く香る
ちょっと嬉しいかも。

シャンパンをとりあえず元に戻し、冷蔵庫を閉めると、ウキウキしながら私も着替えを取りに行き……。

「ねぇねぇ。せっかくだから、二人でクリスマス……」

言いかけて、彼の姿に首を傾げた。

……どうしてワイシャツにネクタイを締めようとしているのかな?

しかも、どう見ても履いているのはスーツのスラックスらしい。

「……どこかに面接でも行くの?」

「行くと思うか?」

「ううん。思わないけど……もしかしてこれからデートに行く?」

「……状況次第だな。お前もシャワー浴びたらそれらしくお洒落しておけ」

「わかった……」

いや。全然わからないけど。

言われた通りに、普段は滅多に袖を通さない、赤いドレスワンピを持ってシャワーを浴びに行く。

一応、出掛けるかもしれないならと、思って化粧もしたけど……。

相変わらず何を考えているのかわからないのが続木さんだなぁ。

ブツブツ言いながら身支度を整えてバスルームを出ると、目に見えたのは一輪の赤いバラだった。


「え……あの?」

それを持っているのは、バッチリとスーツを着込み、どこか緊張した雰囲気を孕む続木さん。

「プレゼント? ありがとう」

「プレゼントだ。それから、これも」

そう言って懐から取り出したものに、思わず目を見開いた。

白いベルベットの小さな箱。

続木さんは器用に片手でその箱を開けると、それを私に向かって差し出す。


……台座の中央に鎮座していたのは、紛れもない指輪。

シンプルな銀色の輝きの中央に、これまたシンプルなダイヤの煌めき。

それが意味する事に、思わずペタリとその場に座り込んだ。
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