雫に溺れて甘く香る
「幸せになんて“してもらう”ことじゃないだろ。片方だけが幸せになるって事は、片方は幸せじゃないかもしれないんだろ?」

それはそうだけど。

「だけど、お互いに不幸にならない努力はする。それじゃだめか?」

「努力するの?」

「俺はこんな奴だし。お前は相変わらずわかりにくいし」

「人のこと言えるわけ?」

沈黙が落ちて、しばらくするとお互いに吹き出した。

「俺もお前の事は言えないか」

クスクス笑いながら顔を見合わせて、それからどちらかともなく唇を重ね合わせる。


「幸せになる努力は、する」

「そうだね。幸せになる努力をしましょ」

「……それが返事だと思っていいか」


瞬時に緊張を含ませた声に、微笑んで頷いた。


「……はい。二人で幸せになりましょう」

そう囁くと、今度は重ね合わせるどころか、思いきり扇情的なキスを交わして抱きしめられる。

その後は……やっぱりいつものように触れられて、お互いに溺れきった。















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