雫に溺れて甘く香る
通話の相手
*****



数日、私も色々考えた。

匂いはともかく“女は褒められたら嬉しく思うのは当たり前”だと結論づけて、今はお店の目の前で、入るか入るまいか考えている。


……だってさぁ。まぁまぁご飯食べるには手頃なんだもん。


今日も朝っぱらから外回り5件だったし、ちょこっと残業したから、それなりに疲れてるし。

一人ご飯て作るの実は難しいし、カレーなんて作ったら、三日どころか四・五日はカレーになっちゃうし。

あ。カレーでもいいかな。カレーなら表通りのお店が……。


「入るのか入らねぇのか。入口で突っ立ってるのはやめろ」

中から続木さんが不機嫌そうに出てきて、そんな彼を見上げた。

「こ、こんばんは……」

「早く入れ」

……そうだねぇ。見つかっちゃったし、ここは入ろう。

言い訳考えていてもしょうがないし、そもそも言い訳を言う相手でもないんだし。

さっさと店の中に戻っていった続木さんを追いながら、さっきまでの自分の姿を思い浮かべる。

数分間はガラスの扉越しに黙って立っていたはずだよね。何やってんだコイツ状態でかなりマヌケだ。

そして、いつも通りにカウンターに座れば、今日は篠原さんじゃなくて続木さんがいる。

「あれ。篠原さんは?」

「遅れてくる」

ポツリと呟かれた答えに頷いて、ジャケットを脱ぐとバックと一緒に隣の席に置いた。
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