雫に溺れて甘く香る
カフェバーは、やっぱり金曜日には混むってことね。

納得して頷きを返すと、篠原さんが出来上がったカクテルをトレイに乗せる。

「3番ボックス」

「はいよー」

軽い返事をしてから、中野さんが離れていった。

「……アイツがフロアに出ると店の雰囲気が居酒屋っぽくなる」

「あははは。続木さんはフロアに出たら一応は笑顔だけど、無口だもんね」

カップに注がれたオニオンスープを飲みながら笑うと、じっと篠原さんに見つめ返されているのに気がつく。

「何か?」

「いえ。別に……」

「篠原さんも案外無口だもんねー?」

「そうでもないですよ? 最低限、続木よりは話す方です」

「え。続木さんてそんなだんまりでしたか?」

「……食後はダイキリでいいんですか?」

「めちゃめちゃ話題変えたね? いいけど。お酒は薄目でお願いします」

そう言うと、篠原さんは無表情に頷いた。

「営業担当なんでしょう? 少しは強くなった方がいいんじゃないですか?」

「いいのいいの。たしなむ位で。女子の営業部員は、お酌することか多いんだもん」

「いつか痛い目みますよ?」

「じゃ、今日は少し濃いめで?」

「せめて宅飲みで試してからにしてください」

ですよねー?
< 4 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop