雫に溺れて甘く香る
「その相手は学生?」

相手なんてどうせ彼女だろうけど、気づいていないふりで聞いてみる。

たぶん、学生ではないだろうなぁ。
スーツを着ていたってワケじゃないけど……会社員とはちょっと違う感じで、かなり可愛かったよね。

「フリーターだな」

「世の中のフリーターに謝れ」

「は?」

やだ。ちょっと僻みが出ちゃった。

さすがの続木さんも目を丸くして固まっているから、愛想笑いで誤魔化す。

「なんてメール来ていたのか、聞いてもいい?」

「あー……仕事が終わったら、会おう的な感じか?」

あ、そう。ごめんね。彼氏は私のせいで残業してるよ。

でも、そしらぬ顔を貫いて頷く。

「こういう業種の金曜なんて忙しいに決まってるじゃない。続木さんの仕事を知らない人?」

知ってるよねぇえ? この間、来てたものねぇ?

「いや。知ってるけど……なんつーか……何も考えて無いんだろうな」


……これはノロケなのかな?

それにしちゃ、ずいぶんと普通に話をしてくるけど。

考えながら烏龍茶のペットボトルを手に取る。

まぁ、私もそんな話を振られて、普通に話をしているんだから、ある意味でおあいこなのかな?

「いただきます」

キャップを捻って口をつけると、続木さんはカウンターから出てきた。

そして、何でか私の隣に座る。

「わがままな奴は、わがままだよな」

「そうね。甘やかされて生きてきたんじゃないの?」

だって、あなたの彼女は可愛かったもの。
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