雫に溺れて甘く香る
見た目も仕草も可愛ければ、他人様から可愛がられるのが“女の子”だもんね。

今日の私みたいに『君なら、セクハラ受けてもサラサラ流すでしょ?』なんて、思われないでしょうよ。

どーせ、私は“守りの範疇外”の女ですよ。

どーせ、どうせ……。


「可愛い子はいいよねぇ」

ポツリと呟いたら、続木さんがスマホをカウンターに置いて眉をひそめる。

「わがままも、度が過ぎりゃ迷惑にしかならねぇよ。こういうのは自己チューって言うんじゃないのか?」

「可愛かったら、許される許容範囲が広いじゃない」

「だからって、何でもかんでも言えばいいってワケでもねぇし。それが許されるのはガキの頃だろ?」

んじゃ、彼女はガキの頃から成長してないってことじゃないか。


「そんなにわがままなの?」

「そうだな。たまに面倒くさい」

かなり酷い言い方だなぁ。

「まわりが合わせるのが当然と思ってる奴は、すぐに怒る」

「少しくらい合わせてあげてもいいんじゃないの? 些細なわがままなんでしょう?」

……付き合ってる女なら、少しくらいのわがままなら許してあげてもいいんじゃないのかな。

考えていたら、続木さんの表情がしかめ面になった。

「終電も終わった真夜中に旅行先の沖縄に来いとか、いつも笑顔でいろとか、注文受けるだけでも他の女と話すなとか、いきなり仕事休んで出掛けようとか、些細なわがままの部類か?」

「……あ、そう」


それは怒ってもいいレベルのわがままかもしれない。
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