雫に溺れて甘く香る
そう願っても、彼は焦らしに焦らす。

もっと貴方の熱をちょうだい。お願いだから。

思わず抱きつくと、続木さんの身体が小刻みに震えたような気がした。

「焦るな」

囁いて、彼の唇が首筋をゆっくりと降りていくのが切ない。

「でも……──!」

じわじわと追い詰められているのがわかる。

胸の先端を唇に含まれた瞬間に、唐突に快感が襲ってきて爆発した。

思わず彼の肩を無我夢中で掴む。

「も……だめっ……!」

「これからだろ?」

そんなところで話さないで!

そうは思っても、すでに言葉は言葉になりにくい。乱すだけ乱されて、思考が白くぼやけてくる。


荒くなった吐息のままでキスを交わし、ぼんやりと彼を見上げると、微かに驚いたような表情が見えた。

「もっとだ……」

「ん……あっ!」

重なりあった身体、少しづつ彼が私を満たしていく。

満たされながら、満たされない思いに涙が滲んだ。

もっと貴方を刻んで欲しい。今だけでもいいから、私を見て。


お願いだから……。


そして肌に残る熱が冷めて来る頃、後悔に似た感情が目覚めて──…

溜め息で忘れる事にした。









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