雫に溺れて甘く香る
学生時代からの友達でもお手上げなら、私にわかるはずがない。

最近、店に来るとこういう事が起こるようになった気がする。訳はわからないけど、たまに続木さんは私を睨む。

それから、たまにスマホを見て不機嫌になっている。

また、彼女からの連絡ね……なんて考えながら、知らんぷりでご飯を食べる事が増えていた。

はっきり言って、消化に悪いことしてるなって、自分でも思うんだ。


……思うけど、こんな関係に終わりにしたくない自分もいて、ズルズルと続いてしまっている。


昔はね、彼女もちの男の人を好きになっていた友達を『馬鹿みたいなことしてないで、他にもいるでしょ』なんて言って説教してた。

少しも振り返ってくれない男を追っかけていても、仕方がないでしょって。

その男を思い続けている時間も、彼のために可愛くなろうとしている労力も、全く報われないじゃない……なんて。

……そうしていたけど、いざ自分がそうなってみると、実際、馬鹿だなって思う。

少しでもいいから、ちょっとの間だけでもいいから……そんな風に考えてしまう自分がいる。

だけど、そんな事は口が裂けても言えない。

だって、“少しの間だけでもいいから一緒にいて欲しい”なんて台詞は、正当な彼女に許される言葉。

間違っても“慰めてあげようか?”って持ちかけた女の台詞じゃない。

可愛い女にはなれないから、せめても大人の女に見せかけた。

それだけは上手くなったような気がしてる。

でも、そんなのはいつまでも続けていられないことも知っている。

だから、自分のなかで明確なタイムリミットを決めていた。

この店が、無くなるまで……って。
< 47 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop