雫に溺れて甘く香る
「え……と。どうしたの?」

少し上擦った声で、耳許に唇をつけて来る彼を咄嗟に手で押し止める。

「別にどうもしないが」

こんな事は初めてでビックリなんだけど!

「あの……っ」

抗議をしかけたら、半ば強引に唇を奪われた。


……続木さんてキスがうまいと思う。


時に強引だったり、時に優しかったりするキスは、私をすぐに蕩けさせる。

じっくりとお互いに貪るようなキスを交わして、視線が合わさった。


最近、キスの後で、反応を見るかのように見つめられる事が増えたような気がする。

そんな時の目はじっと私を見ていて……とても綺麗で、吸い寄せられるように引き寄せられた。


ぼんやりしていたらバスローブの紐が解かれて、その瞬間に、意識が覚醒する。


「え。ちょっと、まっ……」

「待ってたのはこっち」

「い、いいい意味わかんないから!」

「勝手に起きて、勝手に風呂入ったから、待ってた」

いや、そこ待たれても非常に困る。
てか、それこそ勝手に待ってなくていいし!

でも、慣らされた身体は、彼の指先にすぐに反応を返して快楽に溺れ始める。


溺れて……沈みこんだ。





***



「おはようございます」

そう言った私に続木さんは顔を上げ、ついでに眉も上げた。

「おはよう」

どうしたことだろう。

気がつけば、消し忘れていた自分のスマホのアラーム音に目を覚まし、目の前にはシャワーを浴びたらしく髪が濡れたままの……でも着替えもきちんと終えた続木さんが、備え付けのコーヒーを淹れている。

片や私は裸のまま、辛うじてシーツに巻き付いている有り様だ。
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