雫に溺れて甘く香る
「朝……?」

朝だよね。間違いなく朝だよね。だって目覚ましアラーム鳴ったもんね。

いつもの目覚ましアラームだもんね。

状況を把握しながら、頭の中で整理を始める。

そんな私を黙って見ながら、続木さんは持っていたコーヒーをテーブルに置いてから、気だるげに首を傾げた。

「お前もコーヒー飲むか?」

「……欲しい」


何故か喉がカラカラで……。


いや。まぁ……それも当たり前だと思うんだ。

私、なんか色々された。もう、ビックリするくらい色んなことされて、泣きながら悲鳴をあげた記憶もある。

「……ぐっすり眠れただろう?」

「意味が違うから!」

誰が、ぐっすり眠りたいから抱いてくださいなんて頼んだ!

て言うか、ぐっすり眠ったわけじゃなくて、意識をぶっ飛ばされた、の間違いじゃないか!

なんなんだ、その体力……って言うか回復力!


……あ。やばい。思い出したらじわじわ恥ずかしくなってきた。

当たり前に恥ずかしい。

シーツを頭から被って丸くなり……。

「コーヒー入った……」

声をかけられて、ビクッと身体が震えた。


正直言うとね。夜はまだいいんだ。

だいたいお店に寄った帰りだし、お店に行くと必ずお酒を飲んでいるし。

酔った勢いで“大人の女”を演じるのは、だいぶ慣れてきていると思うんだ?


だけど、だからこそ、いつも夜のうちに帰っていたのに……!

素面に戻ってしまった翌朝に、こんな格好で、こんな目覚めは全く慣れていないんだけど!
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