雫に溺れて甘く香る
でも顔は似てないなぁ。

続木さんの方が、何て言うかキリッと男らしいって言うか……この人は少し眠そうな顔と言うか、柔和な感じ。

そもそも続木さんは無表情だし、彼は笑顔で……って、比べてどうする。


思わず頭を抱えそうになってしまうけど、彼と目が合ってやめた。


「……何だかすみません。紹介されるつもりもなく来ちゃいました」

「大丈夫ですよ。確かに俺は彼女いないけど、そんなにガツガツしてる訳じゃないし」

ああ、そうなんだ……と、思っていたら、彼はニヤリと私を眺める。

「でも、工藤さんて24? そろそろ適齢期だから慌てるんじゃないの?」


……失礼な部分も似ているのかな。

そんなところを、赤の他人様が似なくてもいいんじゃないかと思うけど。


「特に慌ててません。焦るつもりはありませんし、そういうのは余計なお世話といいます」

「そのままキャリアでも目指しているわけ?」

「そんなつもりはないですが、タイミングが最悪とでも申しておきましょうか?」

ニコニコと応酬していたら、原さんと柳原さんがひきつったような顔をしていた。

「工藤さんて、実は毒舌なの?」

原さんが呟いたから、彼女を振り返り、私は真剣な顔を作る。

「営業部にいる時は仕事中でしょ? でも、出来ることと出来ないことはハッキリ言ってるよ。私は“紹介”はいいって断ったんだからね?」

「うん。ごめん……」
< 63 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop