雫に溺れて甘く香る
まぁまぁと、柳原さんが間に入って場が和む。

「あまりいじめないでやってくれ。注文しようよ、注文」

「ちょっと柳原さん。私はいじめたつもりはないですからね!」

とにかく“紹介される”というより
は、“飲み会”になって、乾杯をしてから隣りに座った原さんを眺めた。


たぶんね、安心したかったのかもしれない。

要するに、柳原さんが“送っていった女”がフリーでいるのが心配だったんでしょ?

貴女の幼馴染みに協力しただけ、なんて教えてもいいんだけど、すっかり落ち着くとこに落ち着いたらしい人たちに言ってもなぁ。


「どうかした?」

見ていたことに気がついた原さんが、首を傾げて私を見る。

「んー……私、今は別に恋人募集していないからね?」

「どうして? いた方がウキウキ楽しいじゃん?」

「そりゃ、好きな相手に好かれてるからでしょ」

言いながらカクテルを飲むと、彼女は一瞬言葉に詰まってから、申し訳なさそうな顔をした。

「え……っと、もしかして、カズ君が好きだった?」

「ああ。それは安心して違うから」

「別の人……?」

まぁ別の人……だよね。

もう、接点なんてあるようで無くなったわけだけど。

「気が向いたら探すつもり」

「でも、工藤さん、そう言ってる間にあっというまだよー?」

「皆、そう言うんだよねー」

そう言って笑いあった。
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