雫に溺れて甘く香る
「とにかく、そういう個人的メールは会社のアドレスに来ないようにな?」

釘を刺されて、肩を竦める。

「……って言うか、人のメールを覗き見しないでくださいよ」

「工藤さんなら、自分の顧客アドレスくらいは登録してるだろ? そうじゃないなら、今回の企画関連かと思ってフォローしようかと……?」

何故。疑問系?

「でも、馬に蹴られるのは勘弁なんで、放置するかなー」

「蹴られませんよー」

ホームボタンを押して画面を消すと、ニヤニヤしてる先輩を振り返った。

「なんだ? 終わったことか?」

「たぶん……」

そう言いかけて、眉を寄せる。

終わった、と言うよりも、終わらせようとしている……の方が正しいのかもしれない。


一応、私が始めた事だから、私が引けば終わると思っていたけど……。

この文章から篠原さんが書いたとは思えないし、中野さんがこんな“俺様”になるはずもなくて。

そう考えると、続木さんが書いたとしか考えられないわけなんだけど。


いつになったらって……まさか待っているの?

と言うか、待っちゃうわけ?

もう、数ヵ月も前になるのに?


考え込んでいたら、クスッと頭上から聞こえてきた。

「曖昧ならハッキリさせた方が、スッキリ次に行きやすいよ?」

「……フォローしないんじゃなかったんですか?」

「フォローしてる訳じゃないよ。そもそも私生活あってこそ仕事も頑張れるだろ。そっちの影響をこっちが受けそうなら、やめとけって言うけど」

やめとけ……かぁ。
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